金融工学事典−Encyclopedia of Financial Engineering−
| 編者 |
今野浩 ・ 刈屋武昭 ・ 木島正明 |
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| 出版社 |
朝倉書店 |
| 出版年 |
2004 |
| 目次・執筆者 |
目次 ・ 執筆者 (PDF) |
内容紹介
この事典は、ファイナンスにおける工学的アプローチ、すなわち「金融工学」の全領域を網羅的に説明することを目的に編まれたものである。
ファイナンス理論をカバーする学問としては、金融工学以外にも、60年代半ば以来40年の歴史をもつ金融経済学(financial economics) と経営財務論 (corporate finance) 、80年代以降発展した数理ファイナンス(mathematical finance) などの分野がある。金融工学はこれらの中で、より実務的な問題を取り扱うところに特徴がある。すなわち、現実の問題をなるべくありのままに捉え、既存のすべての理論と計算技術を動員して問題解決を図る、というアプローチである。
ファイナンスにおける工学的アプローチは、1952年に発表されたMarkowitzの平均・分散モデルを出発点としている。しかし80年代初めまでのこの分野は、経済学・経営学の分野として発展してきた。60年代半ばのSharpe-Lintner-Mossin の均衡モデル (CAPM; capital asset pricing model)、70年代はじめの Black-Scholes-Merton による条件付き請求権の価格付け理論を経て、70年代末から80年代初めにかけてのHarrison-Kreps-Pliska の無裁定条件と同値マルチンげール測度に関わる理論は、経済学としてのファイナンス理論が組み立てた豪華絢爛な大伽藍である。
そして80年代以降、これらの理論をベースとして、より複雑かつ困難な問題に取り組む時代がやってきた。入り組んだ条件付請求権を持つ資産価格格付け、信用リスクの計量化と制御、超大型資産運用モデル、企業やプロジェクト価値を評価するリアルオプションなど、長期にわたる不確定なキャッシュフローのリスク・リターン分析には、どれも大量の計算が必要とされる。
このために必要となったのは、さまざまな工学的手法である。動的計画法、確率計画法、大型線形・非線形最適化などの最適化手法、伊藤の公式に代表される確率解析の理論やMarkov連鎖などをを用いた確率モデル、資産価格の変動を記述するための時系列分析手法や極値統計理論、擬似乱数や低喰い違い列を用いたモンテカルロ・シュミレーション技術、そして決定分析などである。
折から80年代半ば以降、急激進行仰した計算機の性能向上と価格低下に助けられ、実用上の難しい問題が次々と解けるようになった。こうして金融工学は着実に世の中に定着していったのである。
本事典が企画されたのは、今から約3年前のことである。猛烈な勢いで発表される新しいモデルや考え方を理解するために、金融工学全般をカバーする事典の必要性が実務界・学界の双方から指摘されていたからである。この構想を最初に提案したのは木島であるが、ここに刈屋と今野が加わり、事典がカバーすべき範囲の設定と項目の選定が開始された。
発展中の分野であるだけに、現時点で「金融工学」の範囲を明確に規定することは難しい。そこで本事典では、10年のスパンのでリスクを最小化するために、金融工学として考えうる最も広い範囲をカバーすることにした。すなわち、今後の金融工学に一定以上の割合を果たす可能性のあるテーマのほとんどすべてを取り上げることにしたという次第である。
1年近い準備のもとに、わが国の金融工学を支える82名の精鋭たちに執筆依頼を行ったの2002年6月のことである。いずれも第一線で活躍する研究者・実務家であるため、執筆を引き受けていただけるかどうか危ぶんだが、幸い95%以上の方々から承諾を受けることができた。それ以来、原稿の精密なチェックを行うとともに、新たに必要となったテーマを追加してできあがったのが、この事典である。
編者としては、この事典が今後少なくとも10年にわたって、わが国の金融工学と金融ビジネスの発展に寄与することを願っている次第である。
なおこの過程で、朝倉書店の皆さんにはひとかたならぬお世話になった。この人達の情熱と激励がなければこの事典が完成すのはずっと先のことになっていたはずであった。ここに厚く御礼申し上げる次第である。
2004年7月 今野 浩 ・ 刈屋 武昭 ・ 木島 正明
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