金融工学研究センターは、金融工学の研究の発展と進化を促すために2000年4月に設立され、2004年4月に再編・拡大された。ここでの「金融工学」は、資本の有効利用の視点からの金融の機能的効率性に関わる科学であると理解される。したがって金融工学は、資産価値評価、リスクプライシング(金融リスク、保険リスク、事業リスク)、派生商品、投資、リスク管理、証券化法、リアルオプションなど、幅広い領域を含むものである。

 当研究センターは、リスクの無裁定プライシング理論、リスク管理のポートフォリオ理論を研究の核とし、多様な応用研究を行う。

 現行の主要な研究プロジェクトは、

  1. 金融リスクの評価問題
  2. 金融と保険の合流問題
  3. 保険リスクの評価問題
  4. 不動産の価値評価、リスク分析問題

などである。

金融工学とは何か 

金融工学は、金融の機能的効率性とリスク評価に関わる思考・知識・技術体系を創造する学問である。したがって学際的な学問として、経済学、会計学、保険学、金融論、法学、統計学、工学、コンピュータサイエンス、数学等多くの既存の学問領域に関係する。金融工学が、一つの独立した領域として出てきた背景には、まずもってリスクの価格理論としての無裁定価格理論の輝かしい確立があり、高度に蓄積された資本の要求、伝統的金融のあり方の非効率性、情報技術のめざましい発展、がある。結果として、企業の経営の効率化やリスク管理、個人のライフサイクルにおける経済厚生、リスク管理に寄与するものである。

金融工学の領域

ミクロ的視点からの金融工学の主要領域

(1) 投資・運用
   ポートフォリオ理論
   投資技術

(2) 派生証券
   無裁定価格理論
   金融リスク、事業リスクのヘッジ手段

(3) リスク管理
   バリューアットリスクなどのリスク管理技術等

(4) ストラクチャードファイナンス
   リスクの移転

(5) リアルオプション
   事業リスクの評価、経営リスクのヘッジ

  

マクロ的視点からの金融工学・金融技術の位置付け

効率的金融システムの設計・開発に関して概念展開力を与えるのが金融工学であり、実際的インプリメンテイションをするのが広義の金融技術である。効率的なシステムは、世界の資本のリターンとリスクに関する多くの意思決定を結び、資本を流入さえ、所得(雇用)の拡大のみならず、実物投資の促進により経済的インフラを拡大する。

(1) 標準化商品(資産)の設計:基礎的インストラメント(モーゲージ証券など)

(2) 新しい市場の創設:ローン(信用リスク)取引市場:中小企業資金調達市場、モーゲージ市場など

(3) 新しい取り引き形態:電力取引、CO2排出権取引きなど取引形態・市場の創設

(4) 金融の機能を促進する規制の設計:BIS規制問題、オペレーションリスクの測定法など

 

金融の機能

機能的視点からの金融とは、金融商品を媒介にして個人の家計や企業の消費、貯蓄の意思決定と、企業の財サービスの生産活動・投資・資本蓄積活動の意思決定のあいだにキャッシュ・フロー(お金の流れ)を作り出すこと、分散化している世界の資金の出し手と取り手のリスクの最適アロケーションを達成させることであり、金融の機能とは、その最適化を可能にしたり、促進する機能である。

機能重視の市場の3要件:ゲームのルールの自由化、情報開示、金融手段の多様化

基本的視点:情報、技術、資本は国家の概念を超える システムの平準を要求される

金融工学研究センター 概要
京都大学経済研究所