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金融工学研究センター
低迷が続く現在の日本経済においては、市場や企業内部に存在する不確実性を見極め、その中から収益性を的確に追求することが投資家や経営者に求められている。そのためには、将来の不確実性を理解し、市場リスクや企業内のさまざまなリスクを識別、計量化し、最適な投資戦略・企業戦略を作り上げていくことが決定的に重要になるが、金融工学はそれらに関する基礎付けを与える。この意味において、金融工学は現在もっとも重要性の高い分野のひとつである。京都大学経済研究所附属金融工学研究センターでは、これまでもこの分野において国際拠点として役割を果たしてきたが、さらに高まりつつある金融工学への需要にこたえるべく所員の重点的再配置を行い、一層の研究陣容の拡充を目指す。特に、金融の機能的効率性とリスク評価に関わる思考・知識・技術体系の創造を目指し、幅広い観点からの研究を行い、有効な政策提言および非政府部門のリスクマネージメントに関する提言を行う。研究領域は次の4領域である。
「金融工学」では、(1) ポートフォリオ理論、投資技術等の投資・運用に関わる問題、(2)金融リスク・事業リスクのヘッジ手段としての派生証券、(3)
バリューアットリスクなどのリスク管理に関わる問題、(4) 卸電力事業等のストラクチャード・ファイナンスに関わる問題、(5)
リアルオプションの事業リスクや環境リスク評価等幅広い分野への応用、などの分析を行う。これらの研究により、政府部門・非政府部門のリスクマネージメントに関して斬新かつ有用な提言を行うことが可能となる。
「ファイナンス」では(1) 標準化商品(資産)の設計、(2)近年発展の著しい資産市場のマイクロストラクチャーの分析、(3)投資家の心理的要因やエージェンシー問題に着目する行動ファイナンスに関する研究を行う。これらは、制度的要因を考慮に入れ、投資家の行動様式を根底から見直すことを意味しているおり、学術的に大きな意義をもつとともに、有効性の高い政策提言に結びつくことが期待される。
「コーポレート・ガーバナンス」では(1)金融市場における資金調達や負債の処理、(2)ベンチャー・キャピタルの役割、(3)株式所有構造が経営の意思決定に与える影響、などについての分析を推進する。これらの研究により、将来のコーポーレート・ガバナンスのあるべき姿や有効な制度設計等に関する政策提言を行うことが期待される。
「資産市場」では (1)新しい市場の創設に関わる問題、(2) 排出権取引などの新しい取引形態に関する問題、(3)
金融の機能を促進する制度設計等に関する研究を行う。これらの研究は、「二酸化炭素派出権取引市場」や「ストラクチャード・ファイナンス」など喫緊の社会的問題に対して、有効な分析道具を与え、いかなる制度を設計すべきかに関しても的確な指針を与えるものと期待される。
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公共政策研究部門
グローバル化、環境問題、先進国における少子高齢化は、現代社会の新たな公共政策のあり方の検討を要請する。また、現在の日本経済の長期停滞にとって、望ましい財政金融政策の提言は喫緊の課題である。このためには、税制、社会保障、所得再分配など、従来の公共経済学が主に対象とした領域に加え、環境、教育、金融システム安定化に関する問題などの領域をも分析対象とする新しい公共政策研究の確立が、公共政策研究部門設置の目的である。この部門では、公共政策の現代的課題を、資源環境政策、国際公共政策、財政金融政策の三分野に大別し、実態の統計的な把握と解析に基づく理論的分析に立脚した具体的政策提案を行うことを目指す。研究 領域は次の3領域である。
「資源環境政策」においては、地球温暖化問題を始めとする地球環境問題全般に対する資源環境政策の検討を、実地調査を含む学際的な国際共同研究方式で進める。「国際公共政策」は、国際財政、国際公共財に関する分析を、国際間の相互依存と政策協調を解明する国際政治経済学の立場から行う新たな学際的研究分野である。資源環境政策と国際公共政策は、地球規模での二酸化炭素排出削減に関する研究にみられるように密接な関連性を有し、さらに両者は、学際性の高い分野でもあるため、両分野の研究者が連携して研究を行うことの意義は大きい。
「財政金融政策」においては、マクロ経済安定化政策としての政策のみでなく、社会保障、社会福祉政策、教育政策、金融システム安定化政策など、財政金融政策の公共的側面を重視する理論と実証に基づいた分析を行い、現代の財政金融政策の望ましいあり方を提案する。公共政策研究部門は、経済社会の現代的課題に対する、斬新な政策提言の発信拠点としての役割を果たすことを目指す。
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複雑系経済研究センター
1990年代に複雑系科学の経済学への適用が進んだが、なかでも非線形経済動学および空間経済学の分野において、経済変動、経済発展などの分析に大きな成功を収め、経済研究所は、世界的にみても、これら経済学の分野での複雑系研究をリードしてきた研究者を複数擁している。平成9-15年には、複雑系経済の拠点形成に対し科学研究費(平成9-13年はCOE形成基礎研究費、平成14-15年はCOE特別推進経費)の助成を受け、この間、数次の学際・国際コンファレンスを主催し、多くの海外研究者との共同研究を通して、研究所内外の研究者とこの分野の世界的拠点としての重要な業績を挙げてきた。本センターの設立は、COE形成研究費助成期間の完了を受け、複雑系経済システム研究拠点の恒常化を目的とする。
複雑系経済研究センターは、複雑系経済学を中心として、空間経済学、経済動学、経済心理学の4つの研究領域を持つ。「複雑系経済学」は、人間の認知と行動、戦略的相互依存関係、マクロ経済の変動現象等を統一的に解明することを目的とする。多数の主体からなる経済の循環現象を分析するため、相互依存性と自己組織化に関する研究により、多部門経済と多数均衡の関係、高次元カオスに関する成果が期待されるなど、従来の経済学における経済主体の行動様式の仮定を根本的に再検討し、経済主体の行動様式の解明が深化される。
「空間経済学」では、産業・人口立地におけるパターン形成、産業集積、都市形成、輸送・交通ハブ・幹線形成、イノベーション、および、経済成長などの関連についての基礎理論および実証分析の手法を整備するとともに、オブジェクト指向および並列プログラミング環境を利用した空間経済のシミュレーション体系の開発を進める。
「経済動学」では、一般的な時空間上の非線形動学分析における数学的手法の整備を行い、本センターの研究領域全般に共通する数学的基礎を構築することを目的とする。
「経済心理学」は、認知科学、心理学、経済学、ゲーム理論をはじめとする社会諸科学を横断した研究領域であり、協力行動における進化・適応、社会的規範の形成など、社会・経済システム構造の創発メカニズムを解明することを目的とする。経済心理学は、複雑系経済学と密接に関連しながら過去10年間に急速に発展し、2002年度には、この分野で、心理学者ダニエル・カーネマンと、実験経済学の中心的担い手であるバーノン・スミスがノーベル経済学賞を受賞した。
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| 複雑系経済システム研究拠点(1997〜2003)のホームページへ |
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経済情報解析研究部門
さまざまな経済主体の活動を数量データによって把握し、統計的手法を用いて解析を行うことで、経済主体の行動原理、経済の運動法則を解明しようとする実証研究の分野は、近年新たな展開を見せている。コンピュータ技術の進展により、大量のデータの統計解析を効率的に行うことが可能となった。これを受けて、個々の家計や企業についてのミクロ経済データを、経済主体の行動理論に基づいて分析する「ミクロ計量経済分析」の分野が発展しつつある。このため、計量経済学の分野では、時間的情報と横断的情報を同時に持つパネルデータや、数量で示すことのできない質的データの解析方法の開発に著しい進歩がみられている。また、アンケート調査や擬似パネルデータの構築などによって、ミクロ統計データを収集、整備する努力は今後さらに重要性を増す。計量経済理論と労働経済、産業組織などの応用計量経済分析の先端的研究を行う研究者が、これらの研究を共同で行うことの意義は大きい。
一方、時系列解析の手法を用いたマクロ経済データの特性の分析、および、マクロ経済モデルのコンピュータ・シミュレーションにより生成されるデータと実際の経済データを比較するカリブレーションといわれる手法が、現代の経済成長、景気循環の実証分析の中核をなしている。それらの「マクロ計量経済分析」の先端分野のさらなる発展のためには、時系列解析手法を研究する計量経済学の研究者と、マクロ経済学の研究者の連携が必須である。
さらに、新たな経済学の分野として、経済主体の行動を実験によって検証しようとする「実験経済学」が確立した。この分野は、とくにゲーム理論との関連が深く、理論を検証するためのゲーム実験の方法論とコンピュータ・ネットワークや実験ソフトの開発を行い、ゲーム理論において理論と実験のフィードバックを可能にする分析枠組みの体系化が進んでいる。現在のミクロ・マクロ計量経済分析が依拠する経済理論は、経済主体の合理性を前提とする理論が中心であるが、実験経済学の分野は、限定合理性などの観点から、経済主体の合理的行動の仮定自体を検証対象としている。そのため、実験経済学と計量経済分析の研究者間の連携による研究推進によって、実証経済学の新たな領域が開拓されることが期待できる。
改組による経済情報解析研究部門の設置は、以上の観点から、ミクロとマクロの計量経済分析の理論と応用、実験経済学の先端的研究を、包括的に経済情報解析研究と捉え、その発展に資することを目的とするものであり、上記の3研究領域からなる。
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経済制度研究部門
社会経済制度の比較研究、企業組織の経済分析、社会的意思決定の分析等の成果に立脚して、広く社会経済組織・制度・慣行の生成と変化、デザイン可能性などを総合的にとらえることを目的とする。制度分析、ならびに、組織の分析が中心となるが、また、経済学が組織・制度の分析を体系化する上で、重要な契機を与えたゲーム理論の研究をも、組織・制度分析の手法の研究として、一つの柱に据える。研究領域は次の3領域である。
「制度の経済分析」は、代表的な制度である市場システムと比較されるべき多様な経済社会制度の理論的実証的研究を基礎として、広範な視点からの経済制度のデザイン、比較、評価を行う。また、動学的な見地から、制度の生成、発展、変化の過程を検証する。これらの研究の上で、政治、歴史的視点はもちろん、社会学、工学的な手法や知見をも交えて研究を行う。
「組織の経済分析」では、契約理論に代表される経済分析の手法を用いることによって、企業組織のみならず、多様な組織・現象を分析対象とすることが可能になっており、組織の内部構造、形成、分化、組織間の関係などを分析する。同時に、実証的発見からのフィードバックにも重点を置く。また、経営学、法学をはじめとする関連領域との緊密な連携をはかる。
「ゲーム理論」は、利己主義、利他主義、互恵主義などの行動誘因の特性、認知と期待形成のメカニズム、限定合理性などの経済行動の基本前提を分析できる人間の意思決定モデルの拡張、戦略的行動の進化と学習のダイナミックなモデルの開発、組織内の長期的関係、情報共有、交渉、制度設計に関する基礎理論の確立、非協力ゲーム理論と協力ゲーム理論を統合するゲームの一般理論の構築を目指す。ゲーム理論において理論と実験のフィードバックを可能にする分析枠組みを体系化する。
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先端政策分析研究センター
本研究センターは、実践的な政策研究を主とする中央官庁より採用された任期付き教員と、理論的研究を主とする経済研究所の専任教員との共同研究を推進する場として、
2005年7月経済研究所内に設置された。センターには、ファイナンシャルポリシー(財政金融政策)、グローバルポリシー(国際的な政策の相互依存等)、コミューナルポリシー(環境・医療・都市問題)の三つの研究領域が設けられている。三つの政策研究領域は相互に密接な関連性を持っており、時代の要請に応じて、政策を多面的に分析することを狙いとしている。
先端政策分析研究センターは、内閣府、財務省・金融庁、経済産業省、国土交通省、環境省の5府省より、2年間の任期付きで採用された教授・助教授計5名の教員と、その運営を担当する専任教授(センター長)(所内併人)1名によって構成されている。経済研究所の主たる研究課題である先端経済分析の手法と理論の有効性を検証し、先端的経済学の研究成果をいち早く的確に政策分析に直結させることにより、現実の経済政策に反映させてゆく。そして、官民学また府省間の垣根を取り払い、官学間における双方向の人的交流を推進し、理論と実証の両面からの政策研究を推し進めることが、センターの目的である。
本研究センター設立の背景には、専門的知識に裏打ちされた交渉力と説得力に秀でた政策立案者の育成、ならびに国際的に高い評価を得られる政策の立案が、これからの日本政府にとっての喫緊の課題であるという認識がある。そのために必要とされる日本の政策分析のレベルアップのためには、縦割りの政策立案・分析の慣習を廃することと、官学間における双方向の人的交流を推し進めることが不可欠である。官から学への人の異動と、自由闊達な交流のための場を、継続的に提供する本センターの意義はきわめて重要である。
また、理論研究を中心とする本研究所の研究成果を、わが国の経済政策に反映させることは、理論経済学研究の有効性を示すために重要な機会である。同時に、現実政策の現場ニーズを適切に取り込むことは、経済理論研究が現実を見失わないために不可欠である。研究所専任所員はセンターの教員との共同研究を通じて、政策的なニーズを的確に把握することができ、そのニーズに応え得るような理論的かつ実証的な研究が推進されることが期待できる。
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